2014年8月14日木曜日

x = a sinθ の置換積分

置換積分の解法パターンの中に、次のようなものがある。

インテグラルの中に
√a^2-x^2
があれば、
x = a sinθ   ( -π/2 <= θ <= π/2 )
と置いて置換積分をせよ。

なぜ、x = a sinθ と置けるのだろうか。今日は多くの時間をこれに費やしてしまった。そして、以下のような結論に至った。


( x = a sinθ と置ける理由)
まず、
y = √a^2-x^2 ・・・(1)
と置く。すると、平方根の数(ルート)は0以上なので、
y >= 0 ・・・(2)
となる。

次に、(1)式の両辺を2乗すると、
y^2 = a^2 - x^2
これを整理すると、
x^2 + y^2 = a^2 ・・・(3)
となる。これは半径aの円の方程式だ。
但し、(2)式より、y >= 0 なのでこれは上半円である。

すると、この上半円から、
cosθ = x/a
より、
x = a cosθ ( 0 <= θ <= π ) ・・・(4)
と、x を表現できる(なお、θの定義域が上記となるのは、(3)式が上半円のためである)。

ところで、(4)式の中の
cosθ ( 0 <= θ <= π )
が取りうる値域は
-a <= cosθ <= a
である。これは、
sinθ (  -π/2 <= θ <= π/2 ) ・・・(5)
が取りうる値域と同じである。そこで、(4)式のcosθを(5)式で置き換えると、
x = a sinθ   ( -π/2 <= θ <= π/2 ) ・・・(6)
となり、解法パターンの式と同じものが得られる。

(なぜ素直に x = a cosθ と置かないのか)
おそらく、その後に続く積分計算を楽にするためであろう。仮に
x = a cosθ ・・・(7)
と置くと、置換積分の解法パターンに沿えば、その後にθで微分することになる。
dx/dθ = -a sinθ ⇔  dx = -a sinθ dθ
すると、上記のように置換後の式(-a sinθ dθ)にマイナス符号が現れ、その後に続く積分計算を面倒なものにしてしまう。これを避けるために x = a sinθ と置いたと思われる。そうすれば、
dx/dθ = a cosθ ⇔  dx = a cosθ dθ
となって、マイナスの符号が現れず、その後に続く積分計算をシンプルなままに維持できる。

(数学者の思惑)
数学の問題を解いていると、「なぜ、このような式展開をするのか」と疑問に思うことがある。その理由を考えてみると、定理や定義、公理に基づく数学的な理由が根拠というよりは、

  • その後の計算が楽になるから
  • 式に規則性ができて便利だから
という数学者の思惑とでも呼ぶべきものが根拠になっているように感じる。今回の置換積分の例もまさにこれではないか。

そして、この数学者の思惑は問題集の解説ではほとんど触れられておらず、それが理解を妨げる原因であるように感じる。


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