エステルの構造決定における、最後のカルボン酸とアルコールの合体部分がよく分からなかったので、解法を整理してみた。
問題
分子式
で表されるエステルAを加水分解すると、ギ酸と2級アルコールを生じた。エステルAの構造式を示せ。
模範解答
まず、エステルを加水分解するとカルボン酸とアルコールが生じることを思い出す。そして、エステルの構造決定は、カルボン酸とアルコールの構造をまず決定して最後に両者を合わせてエステルの構造を決定する、という手順を踏む。
最初に不飽和度を計算しておく。この問では、
{ (2x5+2)-10 } ÷ 2 = 1
より、不飽和度はU=1である(Cが5個、Hが10個のため)。つまり、求めるエステルには二重結合が1つある。
さて、この問でのカルボン酸はギ酸であり、構造式は下図となる。
ギ酸は二重結合を1つ持ち、かつCを1個持つので、アルコールはCを4個持つ単結合の構造である(U=1よりエステルは二重結合を1個持つので、ギ酸で二重結合が一つあるということはアルコールは単結合である。また、エステルはCを5個持っているので、ギ酸で1個、アルコールで4個となる)。Cを4個持つアルコールの異性体をリストアップすると、以下となる。
さて、カルボン酸とアルコールの構造が決まったので、最後に両者を合体させてエステルの構造を決定しよう。私はここがよく分からなかった。
手順のポイントは以下の通り。
(1)まずカルボン酸内においてエステル基となる箇所を囲む。
(2)アルコールとカルボン酸のR基を囲む。
(3)加水されて生じたH2O部分(カルボン酸とアルコールからエステルを生成する場合は脱水される部分)を囲んで合体する。
すると上図の一番下の、エステルの構造式が得られる。
有機化学に対する雑感
大学受験レベルの有機化学は、クイズゲームとパズルゲームの融合であるという印象を受ける。
例えば、今回の例題では簡略化したが、「あるエステルを加水分解したら、銀鏡反応を示す化合物が得られた。この化合物は何か」という問題の場合、銀鏡反応を示す化合物はエステルの加水分解においてはギ酸しかない、という知識を用いて解く。この解き方はクイズを思わせる。一方、異性体のリストアップや、カルボン酸とアルコールからのエステルの構造式決定などはパズルを思わせる。