2014年9月21日日曜日

「なぜ彼はそこにいるのか」という褒め言葉


今年の春頃に ダウントン アビー に夢中になっていた(受験勉強中にも関わらず)。一応リスニングも兼ねて英語で聞いていたのだが、その中でデイジーが以下の台詞を発していた。

And why would he be when he’s seen and done so much and I’ve been nowhere and done nothing?

吹き替えの訳は、「トーマスって素敵ですよね。物知りで何でもできて、それにひきかえ私は世間知らずで」といったものだった。しかし、なぜこのような和訳になるか疑問に感じていた。直訳すると以下のようになるからだ。

「なぜ彼はそこにいるのか。彼は何でも知っていて何でもできる時、そして私はどこにもいなくて何もできない時」

最近改めて考え直して、次のようなニュアンスなのではないか、と思うようになった。

「私はどこにもいなくて何もできない時(=私は世間知らず)に、彼が何でも知っていてなんでもできる時を見ると、彼がここに(下僕として)いるのは何故かと思うほど、彼は素晴らしい」

正しいという確信は無いが、このニュアンスの解釈だと吹き替えの和訳もしっくり来る。

「慣れるより慣れろ」

「習うより慣れろ」という表現は、「習う」の語源を考えると少し面白い。古文単語帳によると、次のように書いてある。

習ふ/馴らふ
1. 慣れる、習慣になる
2. 慣れ親しむ

語源を踏まえると、件の表現は「慣れるより慣れろ」と同義反復になってしまう。おそらく、この表現は語源が忘れ去られた時代に生まれたのだろうが、それが語源と矛盾したものになるのは興味深い。